目次
あらすじ
『星やどり』という喫茶店を営む早坂家。
6人兄弟が1章ずつオムニバス形式でストーリーをつないでいく。
社会人、大学生、高校生、小学生それぞれの悩みや父への思いを胸に抱きつつ生活しているなかで、家族に少しずつ変化が訪れる。
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感想
ボロボロ泣いてしまった。
朝井リョウは『何者』だけ読んだことがあって2冊めだったのだけど、とても好きな作家さんになった。
爽やかで温かいストーリーと、映像が目に浮かぶ表現で映画をみているような気分になる。
年の違う6人兄弟の、それぞれの年代ごとの悩みや、ゆらぐ心がリアルで面白い。
個性バラバラな6人の性格を分かりやすく描いているけれど、根っこには兄弟としてのつながりが感じられるようなキャラクターがすてき。
一人一人が実在しているかのように生き生きとしていて、ぜひそれぞれを主人公にした小説を読んでみたいなと思った。
6人それぞれのストーリーが全部良くて甲乙つけがたい。
長男:光彦
就活中の大学生。長男にしてはちょっと頼りなさもあるけど、兄弟思いの優しい兄ちゃん。
就活中、そしてこれから社会人になるというタイミングのつらさや葛藤を描いていて、『何者』につながるイメージ。
就活を経験したひとなみんな共感できるような学生から大人になる時の息苦しさが、居酒屋の匂いと共に思い出させるようなシーンが印象的。
次男:凌馬(りょうま)
凌馬の話が一番好きかも。
バカな高校生でいっつもふざけているけど、実は幼馴染みが好きで、幼馴染みには優しい。
幼馴染みにお弁当を作ってあげるシーン、一緒に屋上で食べるシーン。
甘酸っぱい青春全快。いい。
三男:真歩
真歩のストーリーも良かった。お父さんが亡くなってからずっと笑わないようになっていた末っ子の真歩。
カメラと友達のおかげでちょっと明るくなれた姿がいい。他の兄弟のストーリーのなかでも彼が成長しているのがわかるのが微笑ましい気持ちになった。
小学生って大人から見たらこどもなんだけど、彼らは彼らできちんと世界が成立している。
大人の世界よりも世界が狭いからそのなかで自分の存在を確立するのが意外と大変だったりする。
特に女の子は。そんなことまで、小学生の時の世界を鮮明に思い起こさせるような情景。
真歩がハヤシと海で遊んでビーフシチューを食べ、友達になれるのがとってもよい。
そのかわいらしさに、きゅんとしてしまった。
双子の姉妹、小春
いわゆる頭の悪そうなギャル。でもそうしていることには理由があった。
人はどうしても見た目で判断されてしまう。それ以外判断する基準がなくて、わからないから。
だけど、当たり前だけどみんな心には色々なことを秘めていて、それぞれ葛藤しているということがわかる。
意外とこういう子のほうが素直だったりもする。母に攻撃的になるところも、高校生っぽい。
そうかと思うと、驚くくらい深くてブラックな面ももっていたりする。優しい彼氏のことをちゃんと好きになるといいなと思った。
双子の姉妹、るり
小春とは正反対。化粧もしない、真面目で成績優秀、いつも星やどりを手伝っている優等生。
ひとりだけ、海沿いの道を自転車通学している。
海沿いを自転車で走っている感じがなんとも爽やか。
真面目な分少し固くて、自分とはって不真面目で学校に来ていないのに成績優秀、陸上でもいつも上位の子に同級生にずるい、嫌いという感情を抱く。
私自身、学生時代ちゃんとしていない子に対してずるい、とか何なの?と思っていた節があるのでるりの感情には共感できる。
物語のなか少し柔らかくなっていくるりが、ステキな女性になりそうだなと思うからいい。
長女:琴美
6人兄弟の長女でしっかり者。休みの日も兄弟の食事やお店を手伝っている。しっかり者ゆえの苦労と葛藤をかかえていたり。
でも、やはり兄弟思い。
父からの言葉のシーンからは、涙がボロボロ。止まらなくなった。
まとめ
家族っていいなと思わせてくれる作品。結婚した友達にプレゼントしたい本
そんなことを、思っていたら珍しく妹から連絡が来て、家族って不思議だなって改めておもった
朝井リョウ、若いからこその爽やかさが、あって読んでいて清々しい気持ちになる
いつか映像化されたら見たい。そっくりな双子のるりと小春の役者を見つけるのが大変だな。
舞台はどこなんだろう。湘南のイメージだったけど。
コーヒーブレイクしながら読んでほしい本です。
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